ムチムチコラム No.3(文責:西村さん)

2014年04月15日 13:24

10年程前でしょうか。

僕が働いている某中古レコード屋さんに閉店間際に駆け込んできた50代と思わしき中年女性は、
とてもか細い声でこう仰いました。


「ド...マ...ヒーラーはありませんか?」


僕は聞き返しました。

「ごめんなさい、よく聞き取れなかったのでもう一度お願いします。」


その女性は一呼吸おき、
意を決したように少しばかり語気を強めて仰いました。

「ドゥジーマッコーヒーラーというアーティストのCDは置いていますか?」


”ドゥジー・マッコーヒーラー”


どうにも聞き覚えのない名前です。

響きだけだとちょっとヨーロッパのメタルのギタリストっぽいです。


十字路で悪魔に魂を売って象牙のピックを手に入れたとか、
気に入らないボーカリストの飼い犬にマジックで眉毛を書いたとか、
急速に膨らむどうでもいいドゥジー伝説の妄想をなんとか抑えつつ、
その中年女性に質問しました。


「すみません、誠に恥ずかしながらちょっとそのアーティストを存知あげないのですが、
どのようなジャンルの音楽をされている方なんですか?」


女性は少々困った顔をされています。

「...ジャンルとかは私もよくわからないです。」



とりあえずパソコンで検索をかけてみます。

カナで入力してみるも全くヒットしません。

アルファベットだと、
Dizzy McCarheller...みたいな感じでしょうか?

...ヒット件数 0...ダメです。

そのほか思いつく限りのスペルで試してみるものの、
有力な情報が全く出てきません。


「失礼ですが、名前の憶え間違いということはないでしょうか?
仰られた名前だと全く引っかからないのですが...。」


中年女性はいかにも心外ですといわんばかりの不満げな表情を浮かべています。

「いえ、合ってると思いますけど。」



そうなるとこちらが聞き間違えた可能性が高いです。



「恐れ入りますが、もう一度、今度はゆっくり言っていただけますか?」

そうお願いすると、
今度は一言一言丁寧に教えて下さいました。

「ドージーマーコーヒーラー、です。」


頭の中でカタカタと音を立てて変換作業が繰り広げられます。

ドゥジーマッコーヒーラー...

ドージーマーコーヒーラー...

ドージマコーヒラ...

ドゥジマコゥヒラ...


...はっ!!!




はい、こうしてその中年女性は欧州の伝説のスーパー・メタル・ギタリストではなく、

”堂島孝平”のCDを無事買って帰られましたとさ。



...”孝平”を”コウヒラ”って読むの、かえって難しいやろ!

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